中型トラック一台で約1500万円の収益増

あらゆる産業界は時代変化とともに技術の高度化を繰り返してきました。その極みがAI(人工知能)でありIOT(モノのインターネット)です。このように、あらゆる分野が加速度的に進化すると、その先に何が待ち受けているのか、人類は未だそれを知りません。このあたりでしばし歩みを止めて過去を振り返り、冷静に先を見据えるゆとりが必要なのかも知れません。

中国の古典に”過ぎたるはなお及ばざるがごとし”という教えがあります。現在のトラックにもややそれを感じる時があります。環境、安全、コンプライアンスなどを追求すると、トラックは現在の姿になるのかも知れないが、車両コストはハネ上がり、それがユーザーの負担となってのしかかります。

便利を追求するとキリがありません。時には本来の目的を見失って過剰品質になってしまうこともあります。”シンプル・イズ・ベスト”は物づくりの基本です。その意味で、このほど弊社 日本リフト株式会社が開発した「安全リフト」は、シンプルな構造です。トラック荷役のあり方を見直す機会を与えます。

今回は「安全リフト」がもたらす効果を物流コストも含めて分析してみたいと思います。


プレート床面は1500mmまで上昇、キャスターで自由に移動できる

リフトゲートの労災防止に貢献

まず簡単に「安全リフト」について簡単に説明します。構造は垂直式リフトゲートをトラックから切り離したような物で、荷物を乗せるプレートがワイヤードリモコンによってエレベーターのように上下動します。本体は幅1950mm、奥行き2143mm、高さ2360mmでで本体重量は約510kg、4箇所にキャスターが付いているので、最大800kgの荷物を載せても手動で自由に動かすことが出来ます。プレートを上下動する動力源は充電器を内蔵したDC24ボルトのバッテリーで、作動時間は上下動とも約10秒です。安全柵の高さは900mmで、プレートの床面は750~1500mmまで上昇、任意の位置で止めることが出来るので軽自動車から大型トラックまで対応できます。

この「安全リフト」の最大の特徴は、本気を荷物の発着地に容易することで、トラックにリフトゲートを搭載しなくても両端の荷役作業が可能になる点です。

荷役の役割としてはややフォークリフトに類似していますが、フォークリフトはバレットを対象にしているのに対して、この「安全リフト」は主にロールボックスが対象になります。例えば、配送センターとコンビニやスーパーマーケットなどのバックヤードに「安全リフト」を配置しておけば、トラックにテールゲートが搭載されていなくても、同様な荷役作業が出来ます。

また、この「安全リフト」に”安全”と銘打っているのは、テールゲートリフターに比べて安全性が高いからです。厚生労働省発表の公表データによると、平成23年には30.670件、24年には31.617件の労働災害がテールゲートリフターの作業中に発生しています。これは、トラックに搭載したテールゲートには安全柵を取り付けにくいことや、ゲートが傾斜している際にロールボックスの動きを作業員が支えきれないケースが多いといわれています。「安全リフト」はプレートが常に水平であることと安全柵を設けているので、労災が起きにくいという利点があります。





400kg積載増、10年間に約1千800万円の稼ぎに

次に、物流コストの視点でみた「安全リフト」のメリットを分析してみます。 トラックに搭載する荷役装置の代表的なものにリフトゲートと通常「ユニック」と呼ばれる搭載クレーンがあります。リフトゲートは積載物を地面から荷台の高さまで持ち上げたり下ろしたりする役割に使われます。搭載クレーンは長尺物や石など重いモノを吊り下げて積み下ろしする場合に使用されます。これらの荷役装置がトラックに搭載されていれば、何時どこででも荷物を積み下ろし出来るので便利です。


画像キャプション: 移動式安全リフトによるトラック荷役

しかし、トラックにこれからの荷役装置を搭載すると、その装置重量だけ車両が重くなるので減トン、つまり荷物を積載できる重量が減らされてしまうことになってしまいます。それだけではなく、荷役装置を搭載していないトラックに比べると、車両が重くなるので、燃費が悪くCO2排出量も多くなります。更に荷役装置の価格や架装費、メンテナンス費用も見逃せません。

トラックの本来の目的は「物を運ぶ」ことです。確かにトラックに荷役装置が搭載してあれば便利です。しかし、それによって運ぶ量が制限されるのであれば、もしかして本末転倒になっているケースも考えられます。


仕様項目 型式 IDOU1
最大リフト能力 800kg
最小~最大床面高さ 軽自動車~大型自動車
定格電圧 バッテリを電源とするDC24V(充電器を内蔵)
リフト操作方法 ワイヤードリモコン
プレート寸法(mm) メイン:1514×1509,5
サブ:1408×420
作動時間 上昇時間:約10秒
下降時間:約10秒
本体重量 約510kg
外観寸法(mm) 幅 1950×奥行 2143×高さ 2360



では、物流の視点からトラックにリフトゲートが搭載されている場合とそうでない場合のコストを比較してみましょう。想定条件は次の通りとします。
《対象車両》
◎車両総重量8トンの中型バントラック
(メーカー完成車)
◎最大積載量=4000kg
《対象テールゲート》
◎最大リフト能力=1000kg
◎リフトゲートの重量=400kg

中型車1台の運賃を1日500km走行するとして60.000円(車扱い)と仮定。すると、1トンあたりの運賃は1日15.000円、400kgに換算すると6000円になります。トラックが1ヶ月25日稼働するとして、400kgの荷物を1ヶ月運べば6000円×25日で150.000になります。これが1年間だと1.800.000円、10年間だと実に18.000.000円にもなります。

では燃費はどうでしょうか?トラックは荷物を満載している時(この場合は8トン)は装置重量は燃費に関係ないので空車時で計算することになりますが、仮に1日500km走行する内の半分、250kmが空車だとして、この距離に対する燃費を比較することになります。

一般に車体重量を10%軽量化すると燃費が2~3%改善されると言われているので、400kgのテールゲートを搭載すると3%悪化する理屈になります。中型トラックが軽油1リットル当たり5km走行するとして、250kmでは50リットルの軽油を消費することになるので、50リットルの3%、つまり1.5リットル燃費が悪化したことになります。1.5リットルの1ヶ月分(25日)は37.5リットル、1年分は450リットル、10年間だと4500リットルになる。軽油価格が1リットル当たり136円だとすると、テールゲート搭載で10年間に使用する燃料費は612.000円と言うことになります。


更に、車両が重くなると燃費が悪化しCO2排出量も多くなります。今回のケースでどの程度CO2排出量が増えるか、計算方式国土交通省のホームページから得ることが出来ますが、ここでは省略します。

その他に直接費として、テールゲートとその架装費の合計が約200.000円だとすると、テールゲート付きトラックと搭載なしトラックのコスト差は10年間で20.612.000円になります。

移動式安全リフトのユーザー価格を、10年間のメンテナンス費用も含めて300万円としても2台で600万円、テールゲート付きトラックとして比較して14.612.000円もの差が出ることが分かります。これは1台分のトラックで比較していますが、使用台数が10台、20台と増えれば、非常に大きな金額となります。このことからも、「安全リフト」の導入は、運送事業者だけでなく荷主に対しても大きなメリットをもたらす事が明らかです。

トラック荷役以外での活用にも期待

この「安全リフト」は、空港でのフード積み込み用として使用されていた機材をヒントを得て開発したもので、用途はトラック荷役に限りません。例えば、中二階に部品をウトックしている工場では、部品の半出入にこの「安全リフト」を設置すれば階段やエレベーターも不要になります。またトラックターミナルのホームの高さと荷台高が合わない時は、その段差調整の役割を果たすことも出来ます。更に、用途によって特別使用も製作可能なので、農業ハウスなどのフラットな場所で高所の果実などを収穫する際にも活躍するかも知れません。

トラックに荷役機械を搭載すれば確かに便利です。しかし、減トンによってトラッkうの”運ぶ”という機能が妨げられても、テールゲートリフターを搭載する必要があるのか、物流のあり方を再検討する価値は十分にあります。

この「安全リフト」を開発した弊社 日本リフトは、テールゲートリフターの専門メーカーです。重労働となっていたトラック荷役を改善した点は高く評価されています。テールゲートリフターを否定している訳ではありません。ただ、物流のあり方を見直すことで、輸送と荷役の分離が可能なケースもあるのではないかと提唱しているのであります。

「安全リフト」の販売は、全国約160店の協力ネットワークのほか、インターネットでの受注も検討中です。本機を開発した弊社社長の鈴木忠彦は「安全リフトの用途は色々な分野が考えられる。消費者が集まるコンビニやスーパーマーケットなどでご使用頂く場合は、もっとファショブルなデザインが要求されるかも知れない。むしろお客様が用途開発されるのではないかと期待している。当社としては、お客様の声に耳を傾けて、用途にあった機能に改良を重ねて行きたい。」と語っています。